[ 大津市/SE構法/安田音楽制作事務所様 ]
アンネの音楽教室
大津市石山駅近くの商店街に建築された音楽教室のご紹介です。
もともと同じ石山商店街で音楽教室を開いておられ必要性を感じてご自宅との店舗兼併用住宅を新築されました。教室の代表であり自らが声楽家でもあるご主人は、イタリアにて音楽の勉強をされていたことから、建物には海外の趣向が存分に取り入れられています。
「自由と楽しさをモットーに毎日ドキドキワクワクしながら演奏ができる空間を作りたい」という思いから教室内の空間づくりにもこだわりを持っておられました。ヨーガセラピストをされている奥様ともご相談されながら、色合い、タイルや壁紙などの内装材、設備機器のひとつひとつ、ディテールの細部にわたるまで入念な打合せを何度も重ね、完成まで皆が妥協のない家づくりでした。
「想像ができ、何か思いを馳せられ、見る人が自分の感性でストーリーを組み上げて、演奏する以外にも喜びが見つかる空間にしたい。」と、教室を訪れる方への思いが溢れる音楽教室です。
- 所在地
- 大津市
- 敷地面積
- 214.04㎡
- 延床面積
- 124.21㎡
- 構造
- 木造2階建(SE構法)
道路面が北向きとなる南北に細長い敷地で、建物の正面のみ表情を見せています。ブルーの部分が教室のエントランス、右手のアーチ型のアプローチがご自宅の玄関です。商店街の一角にハッとする素敵な建物が現れます。
店舗のエントランスには凹凸のモールディングを組み合わせ、塗装を施しました。
あつらえた玄関ドアには溶接したアイアンパーツを組み込み、外壁と同色に仕上げています。
建物の顔となるエントランスの色は最後の最後まで悩み抜き、サンプルをいくつも取り寄せ、時間をかけて決定しました。ご入居後に見知らぬ方から色番の問い合わせがあるほど、素敵で印象的なエントランスに仕上がりました。
土間には500mm角の大判タイルを3色、配置よく貼り合わせています。
教室のドアを通ると、一瞬にして異国の世界へ引き込まれる内装にハッとさせられます。クロスに照明に調度品にと、全てにお施主様のこだわりと愛着を感じることができます。
左手の受付には前教室で大切に使われてきたカウンターを加工し設置しました。
床には土足対応のフロアタイルを。教室に来られた方が靴のまま屋内に入ることに抵抗がないよう、敢えて古びた雰囲気のある柄がミックスされたデザインを貼り合わせています。
ご自宅へは右手の通用ドアからも出入りが可能です。
玄関ドアの内側には「どこかにピンクの色合いを使いたい」と奥様のご希望で、外側とは雰囲気の違う淡い色合いで仕上げました。
カウンター奥は事務所となっています。
通路の奥には楽譜やCD、書籍が収められた本棚に目を奪われます。長年音楽に携わってこられた証となる宝物がぎっしりと詰まっているようで、その多さに圧倒され、音楽への意気込みと楽しさが伝わってきます。大切に使われてきた家具の「ろくろ脚」を組み込み、思い入れのある特別なデザインに仕上がりました。<br/>世界観あふれる本棚の前を通り抜け教室へ。本棚にはベートー・ベン、モーツァルト、バッハ…多数の音楽家の名前が連なり、レッスンが始まる前から音楽に触れることができる特別な空間です。<br/>
奥のピアノ室には以前の教室で使われていた防音ドアに白色を塗装し取り付けました。
左手にはクローゼットを配置してあり、ドアには海外生活で使われていたカレンダーの一部をレイアウトされています。白い内装に映える玄関ドアの淡いピンク色が綺麗です。
グランドピアノが置かれたメインの教室です。パーテーションで仕切りをして2部屋に分けることもできます。輸入壁紙に額縁を取り付け、まるで絵画のように壁面を飾りました。
奥の練習室の壁には奥様が選ばれた「ウィリアム・モリス」デザインのクロスを貼っています。<br/>画家によるペイント仕上げのピアノも印象的です。こんなにも素敵な空間で演奏できる教室は楽しみですね。
トイレの手洗い器です。限られた空間ですが、手洗い器、壁紙、照明、小物…ひとつひとつに思い入れを持って選んでくださいました。
ご自宅は2階にレイアウトされ、玄関ドアと、左手のドアから教室への出入りができるようになっています。
教室とは雰囲気が異なり、ブルーとグレーを基調に配色しています。
土間はシンプルなモルタル仕上げとしました。
階段の蹴込みにはグレーを、踏み板は木のそのままの色合いを残して仕上げました。
濃い色合いに仕上げた玄関収納がいいアクセントとなっています。
玄関のモルタル土間の一部にプレートを埋め込みました。文字のチョイスに奥様らしさを感じます。
どこかに「ヘリンボーン」のデザインを取り入れたいというご希望から、玄関土間の一角にタイルを埋め込みました。まばらで淡い色合いのタイルがお家の雰囲気をよく表しています。
階段を上った先には南側に配置されたLDKが広がります。5.4×6.3mの広い空間は耐震性の高いSE構法ならでは。
屋根の形状に合わせて勾配に貼った天井が高く、南面の窓からの採光が白い内装に反射してより明るいリビングです。南の窓際はランドリールームに利用されています。
アイランド型となるキッチンの奥にはパントリーと水周りを配置。上部には跳ね出した形でロフトを設けました。跳ね出した5.4mの間に柱を設けなくとも、このような大胆な設計ができるSE構法の特徴が活かされています。
造り付けのキッチン収納です。食器棚も兼ねていて、調理家電、ゴミ箱全てを扉の中に仕舞い込むデザインに仕上げました。上部のオープンシェルフにはこぼれ止めのバーを取り付けています。収納には濃いめのグレーを使いアクセントになりました。奥は少し高さを下げたデスクです。
通路の先には子供部屋と寝室、ロフトへの登り口を配置しています。階段を登りきった部分には集中コントローラーを取り付け、マガジラックとニッチ収納を設けました。
通路の一角には手洗いを設けました。照明や鏡、手洗い器は全て奥様が好みで手配されたもの。
腰壁のグレー色には濃淡の具合にもこだわり、濃すぎず空間に馴染みながら、それでいて主張を忘れない色合いに。
ロフトは奥様のヨガレッスンに使われています。こちらは他とは印象を変えて自然な木目の床で、秘密基地のような屋根裏の雰囲気に仕上がりました。
建物北側の奥に配置された寝室です。
窓前のライティングは外から見てちょうどいい位置に取り付けています。
淡い色の内装で落ち着いた雰囲気に仕上がりました。
お子様の部屋も北側の奥に配置されています。眩しさのない北向きの均一な明かりがちょうどいい空間をつくっています。
【お客様の声】
同じ商店街で建築のできる土地をずっと探していました。ある集まりで楠亀さんとお知り合いになり、建築の依頼とは関係なく土地の相談などしていました。このような家のデザインは楠亀さんでは前例がなかったのかもしれませんが、家は建てる人の好みが出ると思っていましたし、過去にどんなデザインの家を建ててこられたのかは関係なく、色々と相談にのってもらった中で「信頼」が一番でした。 家づくりの希望はとにかく「音漏れ対策」でした。特別な防音は不要とおっしゃっていて、実は最後の最後まで心配ではあったんですが、実際に建ってみて一番気に入っているのは「防音」です!何の心配もなく本当に安心できる仕上がりになりました。自宅が2階にあるので、多少は注意する点はありますが。知り合いの建築士の方からどんな建て方したの?と問合せされたくらいしっかりしていますよ。「ダブル断熱」で断熱や気密性がいいとは聞いていましたが、防音もいいんですね。近くの電車の音も窓を閉めると聞こえないんです。(安田様)
色々と要望はお伝えしてきて、他の方に比べて多かったのかどうかはわかりませんが、ただ、伝えたことは全て設計の方が対応してくださったおかげで完成した家だと思っています。例えば教室のエントランスの色は、決めるのにとても悩んで私の心が折れそうになったのですが、設計の平柳さんが諦めなかったおかげでとっても素敵で理想的な色合いになりました。色んな物を置いたり片付けるのが苦手で、何も置かなくてもインテリアになる家がいいと思っていたので、モールや壁紙などこだわって時間もかけて選びました。(奥様)
建築中は家が近所でしたし毎日見学へ行きました。手形をつけたり、左官業者さんと仕上げの話をしたり。思い出は棟上げの時に柱にピンを打ったこと。重たいハンマーを持って、とても硬くて大変だった。住んでからはロフトと、自分の部屋が気に入っています。(息子さん)実際に触れてみて、SE構法の強さを実感できたとか。
ただ一つ残念なことがあって、毎日現場で手を止めて丁寧に対応してくださった大工の田中さんに会えなくなることが本当に寂しかったです。もう、ロスですね。それくらい毎日会って、短期間でしたがおかげで楽しい家づくりでした。