家族を守る家には断熱が不可欠健康と断熱の大切な関係
設計担当の田辺です。
楠亀工務店に入社し、設計の仕事に就いて18年が経ちます。
この間に住宅の仕様は日々進化してきました。法律や制度が改正されてきたことと並行して、さまざまな専門分野の方が知識・技術をネットやYouTubeなどで知識や技術を伝えてくれてるおかげで、情報が簡単に得られるようになったのも理由の一つだと感じています。
お客様との打ち合わせ方法も随分変わりました。画像や建築パースの3D技術もグンと進化し、またInstagram、Pinterest、tectureなどSNSにアップされた情報(画像)を利用することでお互いのイメージを伝えやすなりましたし、通信手段の進化によって情報を共有しやすくなりました。直接お会いする機会も数回程度になりました。
業務の上で大きなメリットになったのはお客様とのイメージの相違もなくなり、「目に見えるもの」(例えば、間取り、敷地、デザイン、仕様など)は理解していただきやすくなったことです。
それとは反対に、「耐震」や「快適性」などといった「目に見えないもの」については、未だに伝えることの難しさを感じています。
少し話が逸れるのですが、先日、父親がお風呂場で倒れてしまいました。原因は貧血でしたが、ヒートショックでは?と非常に心配しました。住宅内でヒートショックが多く起こることを知っているだけに、今後起こり得る介護や、更には死さえも感じてしまいました。
そこで私自身がこのようなことを身近に感じる機会があったので、セミナー等でお話ししている内容を少しお伝えしたいと思います。
楠亀工務店では7年前から高気密高断熱の家に取り組むようになったことから、住宅内での死亡事故のニュースにかなり敏感に反応するようになりました。要因の一つにヒートショックによる血管系への悪影響があります。
ヒートショックとは、
暖房が効いている暖かい部屋から寒い部屋へ移動した時など、急な温度差によって心臓や血管に負担がかかる状態のことです。部屋間の温度差が8℃以上になるとヒートショックが起こりやすいといわれ、隙間の多い日本の家では、寒い冬の発生率が非常に高いのが特徴です。
特に真冬の入浴時は、暖かい部屋から寒い脱衣所に移動して裸になると、体の熱を奪われまいとして血管が縮み、血圧が上昇します。この状態でお湯につかると今度は血圧が下がり、さらなる血圧変動が起こります。体が急激な温度変化に耐えることができないと、時には脳卒中や脳血管疾患、心筋梗塞などにより体が動かなくなりそのまま溺死する可能性もあります。1人暮らしでは死亡リスクがさらに高まります。
日本で入浴中に死亡した人の数は、交通事故による死者数の約4倍にもなります。
夏に起こる熱中症も非常に危険です。
熱中症とは、高温多湿の状況で体内の水分が不足し、体温調節ができなくなることで起こる吐き気やめまい、頭痛などの一連の症状です。重度になると、高熱を出して意識障害、けいれん、手足の運動障害などが起こり、さらに悪化すると脳障害や肝機能障害を起こして死に至る危険性もあります。近年は猛暑日が多く、熱中症の発生率が増加しています。
熱中症で亡くなった人の約50%は住宅で死亡しており、特に高齢者は室内での暑さを感じにくくなるため、気がついた時には危険な状態で病院に搬送されることが多いのです。
この様な住宅内の事故から、家族の身を守るには温度差のない家造りが重要です。ただ日本の家はほとんどが、未だに無断熱の家に該当しているのが現状です。
日本は世界的に見ても住宅の気密・断熱化がかなり遅れています。
また日本は世界一の長寿命国と言われています。
しかし健康でいられる年齢と、寿命とには10年の差があります。人によっては長生きしても10年もの間、介護を必要とするのです。健康寿命は単に老化によるものだけでなく、住宅内での事故による病気も大きく影響しています。
健康寿命を延ばすためにも、人が住む家は、安全で安心できる場所でないといけません。目には見えないのですが、家づくりの重要な部分として多くの方に理解してもらいたいと、日々努めています。
ここからは少々個人的な話になります。
私の家はまだ昔ながらの木造住宅(無断熱の家)に3世代で住んでいます。親や子供、自分の命を守る家の性能の重要性を1番わかっている専門家として本当は断熱の効いた家に住むべきなのですが、
建て替えはある約束を果たしてからと決めています。
1級建築士試験に合格してから家を建てる。
いずれかは建て替えをしようと考え始めて10年以上、未だに叶えられていません。1次の学科試験に7回 2次の製図試験に4回 不合格を経験してます。なかなか思い通りにならない中、先日の親父のこともあり、危機感を感じています。
家族を守る責任と自分の1級建築士の目標
今年はすべて叶えるだという決意を公開して自分を追い込みます。
設計主任 田辺俊也